ある2人へ

敬意と殺意を込めて

 

こんにちは。8期のトマトです。

AnotherVisionでは裏方だったり、たまにスタッフだったり、今年はAVCCのとりまとめだったり。

 

さて、AVCCでは今年も多くの記事が投稿されました。

30本以上の記事が存在するのだから、読者全員に宛ててはいない記事が1本や2本あっても問題ないでしょう。

この記事はごく少数の人の話しかしていませんが、この記事を訪れてくれた方も他人の紹介文を読むような、あるいは告白や決闘の現場を覗くような気持ちで読んでもらえれば幸いです。

 

 

 

親みたいな人に引導を渡したかった

親についての話をしましょう。

親といっても、生まれたばかりの雛鳥が初めて見た動くものを親だと思う、あの親です。団体に入って初めて何かを教え、面倒を見てくれた団体内の親。

親2人にはとてもお世話になりました。とりわけ母親には何度も助けられました。制作における技術や裏方の業務を教わっただけでなく、ひねくれた性格の私に対して諭してくれたり、謎解きやマーダーミステリーで遊んでくれたり。

「もう何もできないし団体にいるのやめたほうがいいんじゃないかって思うんですよね」って言ったら「やめたほうがいいかもね」って返すような人だから、わりと信用してたしかなり頼ってました。過言ではなく尊敬している人です。

 

だからあなたを殺したかった。現役で団体を構成する人としての生命を断ち、余生を過ごすだけの存在にしたかった。いつだったか、あなたが疎ましく見えた。尊敬している人だからこそ疎ましく思いたくなかったし、もしこの先他の同期や後輩にも疎ましがられることがあったらと思うと怖かった。格好良いままの姿で終わってほしかった。だから殺したいと思った。でもできなかった。殺したいと思いながら無意識のうちに頼り続け、そのうち殺意もそれを抱いた理由も忘れていた。だから今も、ほとんど死んだようなあなたに引導を渡すことすらできずにいる。

どうすれば良かったのかな。

 

 

 

憧れている人に憧れるのをやめた

憧れている人の話をしましょう。

見とれるくらい綺麗な日本語を使う人。堅い文書ではもちろん、砕けた文章や面白おかしい文章でも日本語の扱いが上手なのは変わらないのです。

一緒に団体の裏方の仕事もしました。今年になって気づいたけど、その人は的確な指示を素早く出せる人で、作業も早い。未熟な私が提案したことにも乗ってくれる優しい人でした。

私淑というと大袈裟かもしれませんが、私はその人に憧れて、その人のようになりたいと思っていました。裏で日本語の使い方を頑張って調べたり、その人の文章を何度も読み返したり。憧れる前にその人の文章のファンでもあったので、いくら読んでも苦にはならないけど、近づこうとするのは難しい。それでもその人を目指していたからできるようになったこともあるし、今の立場にもなれたのかもしれません。

 

そんなあなたと同じ立場になったから、嬉しくて、上手くやりたかった。でも目指せば目指すほど遠く見えた。だから憧れるのをやめた。同じ方向を見ていたらいつまでも敵わないと思った。あなたが上から引き継いだもの、あなたが作ってくれたものを全て壊して作り直した。そうすることでしか劣化版になることを避けられなかった。そうしてずっと周りの人を振り回している。新しく作ったものが瓦解するのを恐れている。

憧れて学ぼうとした日本語も、良くて「人並みよりやや上」くらいのものでしかない。

 

 

AVCCの話、あるいは

AVCCの話をしましょう。

親はAVCCの取りまとめでした。憧れていた人は毎年面白くて素敵な文章を書いていました。だから今年の取りまとめになったのです。親が残したものを私も残したかったし、憧れていた人が文章を書く場所を用意したかった。だから今年のAVCCを開催できて、嬉しく思っています。こんな個人的な感情を伝えても一緒に取りまとめをしてくれたまるには感謝しかありません。

 

これは建前。嘘ではないけど主な理由でもない。私は人々が文章を書く場を残したかった。親が取りまとめでも取りまとめじゃなくてもどうでもいいし、文章を書くのが上手な人だけでなく書きたい人が好きに書ける場所であってほしい。謎解き制作においてテキストの立ち位置は脆弱だ。花形でもないし、ストーリーを考える人以外はスポットライトが当たることもない。綺麗な謎、素晴らしいデザインだと褒める人はいても、指示文や注意書き、ストーリーシートの文章に目を向ける人は何人いるだろうか。テキストは技術を教えられることもない。できる人が少人数でやるだけ。私はテキストも謎やデザイン、物品やスタッフ、キャスト、その他諸々と同じくらい重要だと思ってるし、もっと目を向けてほしい。だからこれは小さな反撃みたいなもの。

 

というのは嘘で、単純に私はAVCCという企画が大好きなので取りまとめをやっています。私が今年の取りまとめを務められているのは、一緒に取りまとめをやってくれたまる、記事を書いてくれた人、書こうとしてくれた人、読んでくれた人、そしてAVCCを作った人と存続させてくれた人のお陰です。

これは全部本心。

みんなありがとう!

本当にありがとうございました。

 

 

 

謝辞

何も伝えず記事にしていいか聞いたのに快諾してくれた2人に心より感謝を申し上げます。